【入試分析】令和6年度鹿児島県公立高校入試を分析しよう!【どのような傾向?】

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みなさん、こんにちは。
郷中塾の堀ノ内です。

 

令和6年3月5日と3月6日の2日間で、令和6年度鹿児島県公立高校入試が行われました。

今回は出題された入試問題の5教科を総評していきたいと思います。

※令和5年度入試の分析については以下をご覧ください。

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1.全体的な傾向

令和4・5年度と2年続けて出題傾向に変化があり、特に令和5年度はすべての教科で問題のページ数が増加するなど、近年大きな変化を見せていました。
しかし、今回の令和6年度入試では大きな問題形式の変更は見られませんでした。

 

いずれにせよ昨年度から『増加傾向にある問題形式』と『求められる能力』として、以下のことが挙げられます。

複数の資料や図を読み取る問題

・「会話文形式の問題

・「素早く必要な情報を読み取る能力

私の肌感覚ですが、大学入学共通テストに合わせた傾向になっていると感じました。

2.【2024年度】鹿児島県立入試:各教科の総評と今後の対策

国語の傾向と対策

【総評】

難易度としては「大幅に易化」したと言えます。

鶴丸・甲南高校合格者の予想得点率は「85%~90%」程だと思われます。

 

理由は全体的にヒントとなる資料が多く提示されているからです。

例えば、論説文では、文章の内容が「ノート」や「発表原稿」という形でまとめられており、どの段落・文章箇所を参考にして解けば良いのか明確でした。

また、古典はそもそも文章自体が非常に読みやすく、しかも参考資料として類似の物語文まで現代語訳つきで与えられていました。

 

過去の問題傾向を踏まえつつ、昨年度・本年度はさらにヒントも合わせて追加された形式となっています。

詳しく見ていきましょう。

【大問1:漢字】

大問1の漢字は例年通り『読み』『書き』3題ずつ出題されました。

漢字の書き取りは小学校で学習した漢字が出題されますが、読みは中学校で学習するものが出題されています。

つまり漢検3級レベルを制覇していたら問題なく完答できるでしょう。

また今年度は「行書で書かれた漢字を楷書で書いた時の総画数」を問う問題が2年ぶりに出題されました。

 

鶴丸・甲南両校を受験する人は絶対に落としてはいけない大問ですので、しっかり対策しておく必要があります。

【大問2:論説文】

評論文は村田和代著『優しいコミュニケーション―「思いやり」の言語学』からの出題でした。

例年、大問2と大問4の文章はその年の4月から6月に出版された本から出題されるようです。

過去問で見たことがある!という文章が出る可能性は極めて低いといえるでしょう。

1は本文中の空欄に当てはまる語の組み合わせを選ぶ問題でしたが、ここ4年間は接続詞を問う問題が続いており、この形式で出題されたのは平成31年度以来でした。

2は重箱読みの熟語を選ばせる問題で、これまでと傾向が変わりました。

同様の形式の問題は、過去10年出題されたことはありません。

 

☆Point!

・重箱読み・・・一文字目が音読み、二文字目が訓読みで構成される熟語

・湯桶読み・・・一文字目が訓読み、二文字目が音読みで構成される熟語

 

3は本文の内容をまとめたノートの穴埋めで本文からの抜き出し、4は本文の内容を踏まえた発表原稿を完成させる65字の記述問題でした。

4に関しては、発表のスライドにヒントが示されていたため、解答根拠となる部分が探しやすかったのではないでしょうか。

 

今回のように、ノートなどの穴埋め形式の問題は、似たような表現が本文中にも示されていることが多いです。

解答根拠を探す際のヒントにしてみてください。

 

5は筆者の考える「聞き手のもつ役割」を果たすことを意識した中学生の応答として、適当でないものを選ぶ問題でした。

今回の設問は、選択肢の中で明らかに違う話題を出しているものがあり、選びやすかったのではないでしょうか。

 

このように、選択肢を見ただけで判断できる問題もありますので、まずは選択肢をじっくり吟味することを意識しましょう。

【大問3:古文】

大問3の古文は「宝物集」からの出題でした。

本文は比較的読みやすく、また設問も平易な問題が多かったため、解きやすかったのではないでしょうか。

 

鹿児島県の古文は、先生と生徒の話し合いの空欄補充の問題が出されています。

本文の内容を考えるうえでのヒントになりますので、うまく活用しながら本文の内容理解を進めたいところです。

【大問4:小説】

大問4の小説文は、真紀涼介『勿忘草をさがして』からの出題でした。

令和5年度と同様、本文だけで3ページ分とかなりの分量となっています。

本文を読むのに時間がかかってしまいました…

1は、「登場人物の気持ちを踏まえて朗読するときにどのように読めばよいか」を選ばせる問題でした。

慣れない形式に戸惑ったかもしれませんが、内容は登場人物の気持ちを考えさせる問題でした。

 

2は「そのこと」の内容説明を抜き出しと10字、15字以内で書かせる問題でした。
いずれも本文中に明記されていたため、解きやすかったのではないかと思います。

 

3は主人公の心情や行動を話の展開に沿って並べ替えるという問題、4は登場人物の様子についての55字以内での記述問題でした。

いずれも本文全体を踏まえたうえで考える問題であり、若干時間がかかる問題でした。

 

鹿児島県の小説では例年60字程度で登場人物の心情を考えさせる問題が出題されていますが、ただ単に気持ちを答えるだけでは到底指定の字数に到達できません

問題によりますが、「登場人物の心情」に加え、「どのような出来事があったのか」まで記述する問題や、「本文の中での気持ちの変化」を記述する問題など、多くのパターンで出題されます。

字数が多い記述は添削をしてもらい、書き方のコツを早い段階で習得できるようにしましょう!

【大問5:作文】

大問5は「在留外国人が抱える課題に対して私たちにできること」というテーマでの作文で、外国人へのインタビューと在留外国人の数、在留外国人が社会参加に関して困っていることが資料として与えられていました。

 

比較的書きやすいテーマでしたが、意外と見落としがちなのは「表記」など作文を書く上での基本的な部分です。

せっかくきちんと作文を書いていたとしても、条件の見落としなどがあるとそれだけで大きく減点されてしまいます。

 

普段の演習などから意識して取り組みましょう!

【今後の対策】

国語の本形式(各問ごとに手がかりとなる要約文や参考資料の提示)は2023年度入試より見られる新たな傾向です。

ヒントが提示されているので解きやすくなっている一方で、小説など文章量の増加が見て取れます。

 

過去問対策をするには類似年度が少ないので、他県の類似問題(徳島県など)にもチャレンジして対応できるようにしておきましょう。

理科の傾向と対策

【総評】

難易度としては「例年通り」と思われます。

鶴丸・甲南高校合格者の予想得点率は「80%~85%」程だと思われます。

 

生物・化学・物理・地学からバランス良く出題されていますが、昨年度より中学3年生からの出題が増加したように思われます。

特に物理はやや難易度が高く、今回の問題では最も差がつきやすい問題個所ではないでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

【大問1:小問集合】

大問1は例年と同じく小問集合でした。

聞かれていること自体は平易ですが、問題文での聞かれ方に戸惑った受験生が多くいたのではないでしょうか。

【大問2:地学】

大問2は地学分野からの出題で、Ⅰが柱状図と地層に関する問題、Ⅱは太陽系の惑星に関する問題でした。

いずれも知識があれば解ける問題が多かったです。

 

Ⅱの最後は、与えられた条件から地球の体積とほかの惑星の体積を比べる問題でした。

図には密度と直径が与えられていましたが、密度は関係なく直径で比べる必要がある、ということに注意しなければならない問題でした。

具体的には、惑星は完全な球体であるとされているので、直径の比が1:4という条件から体積の比が1:64と導出できます。

【大問3:化学】

大問3は化学分野からの出題で、Ⅰは飽和水溶液に関する問題、Ⅱは金属の密度と金属の酸化に関する問題でした。

 

Ⅰは再結晶に関する典型の計算問題で、Ⅱは表から同じ金属を求める問題と金属の酸化に関する典型問題でした。

 

最後の問題は解き方を知っていれば完答することができるパターン問題でした。

化学分野の計算は、反応した空気の量や発生した気体の量など、「気体の質量」に着目して立式するとうまくいくことが多いです。

また、化学分野の計算問題はほとんど「比例式」を用いることで解くことができます。

 

「気体の量からとりあえず比例式を立ててみよう」と、試行錯誤しながら解いてみましょう。

【大問4:生物】

大問4は生物分野からの出題で、Ⅰは細胞に関する問題、Ⅱは生殖に関する問題でした。

植物細胞と動物細胞の違いをイラストをもとに考える問題で、基本的な事項が多く聞かれていました。

 

Ⅱでは、受精前の卵細胞が持っている遺伝子を書かせる問題が出題されました。

親の遺伝子や子の遺伝子の組み合わせを聞く問題は頻出ですが、生殖細胞そのものの遺伝子を聞く問題が出題されていました。

 

パターン演習も大事ですが、どのような聞かれ方をしたとしても答えることができる対応力を身に付けることが重要です。

【大問5:物理】

大問5は物理分野からの出題で、Ⅰはエネルギーに関する問題、Ⅱはばねに関する問題でした。

いずれも3年生の学習内容が含まれており、やや難易度が高いように思いました。

 

仕事の大きさから発電効率を求める計算問題や、2つのばねばかりを用いてばねを引っ張る問題など、思考力を問う問題も多かったです。

 

最後の問題に関しては、2つのばねばかりのうち1つは詳細が明らかにされていませんが、「わかっているもう1つのものと同じである」と仮定して考えるとわかりやすかったのではないでしょうか。

令和5年度の問題は、3年生の学習内容である「天体」「運動とエネルギー」が出題されなかったこともあり全体的に易しい問題が多かった印象ですが、令和6年度の問題では3年生での学習内容が全体の3分の1以上出題されたこともあり、全体的に難易度が高かったように思います。

【対策】

1度は目にしたような頻出のパターン問題が出題されている一方で、資料読み取り・読解力も問われています。

例えば大問3,5はいずれも会話文の空所を埋めながら問題に回答する形式でした。

とは言え、通常通り読めば会話の流れで何が問われているかはすぐに分かるかと思います。

 

また、知識がなくとも論理的思考力で導き出せる問題も一定数出題されています。

(例)「地球型惑星の温度が高いか低いか知らなくとも、太陽からの距離が近いのだから高いであろう」など

 

頻出パターン問題を解くのはもちろんのこと、科学現象に少しでも疑問点があれば徹底的に探究しましょう。

英語の傾向と対策

【総評】

難易度としては「例年通り」と思われます。

鶴丸・甲南高校合格者の予想得点率は「80%~85%」程だと思われます。

昨年度大きく出題傾向が変化した英語ですが、形式自体を見ると昨年度と大きな変化はありませんでした。

問題自体の難易度は平易ですが、時間がかかる問題が多く、スピードが求められる試験だったように思えます。

【大問1:リスニング】

大問1はリスニング問題でした。

 

1~5は1回のみの放送でしたが、3では「cap」と「cat」を聞き分けるやや難解な問題が出題されていました。

また、8では仮定法を用いて質問されており、質問に対する答えも仮定法を用いて答えなければならない問題でした。

【大問2:対話文・空所補充・英作文】

大問2の1は対話文選択問題でした。

2は英語による説明をもとにした適語補充で、①の「umbrella」はわかったけどスペルを間違えた生徒が一定数いたのではないでしょうか。

一方で②の「uncle」は模試で同じようなものが出題されたことがあり、正答率は高かったのではないかと思います。

 

3の適文補充は前後とのつながりを考えたうえで、時制や単複を考える必要があります。

今回の問題では、(1)では過去形で、(3)ではthese booksという情報から複数形で表す必要がありました。

 

4は昨年度と同じく、イラストを見て出来事を記述する問題でした。

このような問題においては、状況を正しく表現する力に加え、言いたいことをいかに伝わるように表現できるか、ということが求められます。

 

例えば、1コマ目の「Harutoという犬を買った」という場面では、

I bought a dog named Haruto. (分詞を用いる)

I got a dog. His name is Haruto. (2文に分ける)

I bought a dog whose name is Haruto.  (関係代名詞whoseを用いる)

など、様々な表現が考えられます。

 

いろいろな表現ができるんですね!

表現の幅を広げる訓練に加え、言いたいことをどのように言い換えるか、といった対策は必須です。

【大問3:中文読解】

大問3は、Ⅰが中文読解、Ⅱが資料の読み取り、Ⅲが内容把握という構成でした。

 

この大問は一見すると分量が多いですが、できれば10分弱程度で解いてしまいたい大問になります。

資料や文章の必要な部分を短時間で読み取るという作業は、訓練すれば必ずできるようになる作業です。

 

特にⅢの問題ですが、早い人は30秒程度で解くことができる問題です。

今回の問題では、「important」という部分に注目して読めばすぐに答えを導き出せます。

【大問4:長文読解】

大問4は「箸」に関する長文読解でした。

 

1は昨年同様、発表の順番を答える問題でした。

2,3はイラストやグラフの中から適当なものを選ばせる問題でした。

4は空欄補充でしたが、後の文との関係性がわかったとしても「何を書いたらよいかわからない」という生徒がいたのではないかと思います。

 

5は下線部の理由を問う問題でした。
「because」や「so」といった理由を直接明示する表現はないものの、下線部の後がそのまま理由になっているので見つけやすかったのではないかと思います。

6は「紙の書籍と電子書籍のどちらが良いか」という英作文で、本文の内容からやや離れた英作文でした。

解答の上でのヒントが示されていたため、比較的とっつきやすかったのではないでしょうか。

【対策】

問われている内容の難易度自体は平易なものですが、とにかく情報量が多くなっています

具体的には、図表・比較表・メモ・スライド・グラフなどの資料が各問題にたくさん出てきています。

英文を読むよりも、これらの情報処理に追われた人が多かったのではないでしょうか。

 

また、英作文は昨年度から形式が変わり、自由英作文から条件英作文に変化しております。

例えば、大問2-4の英作文は4コマ漫画に沿った対応文を自分で考えて記述しなければなりませんし、大問4-6の英作文は与えられたキーワードの中から使用するワードを選択する必要がありました。

つまり英作文を書く前に大前提として、条件を満たした平易な日本語の文章を想像する力が必要なのです。

 

全体的に情報処理能力・論理的思考力・読解力などを問われる形式へとシフトしています。

とりわけ資料・条件問題を短時間で解く訓練は繰り返し行っておきましょう。

社会の傾向と対策

【総評】

難易度としては「やや難化」と思われます。

鶴丸・甲南高校合格者の予想得点率は「85%~90%」程だと思われます。

特に記述問題の難易度が難化しました。

「何を書けば良いか何となくは分かるが、要点を捉えて文章化するのが難しい」といった感想の受験生が多かったのではないでしょうか。

【大問1:地理】

大問1は地理分野からの出題でした。

Ⅰの世界地理は大陸名、対蹠点、アメリカの州別人口構成など頻出問題が多く出題されました。

 

3は記述で頻出の高床式住居の問題でした。

熱帯と冷帯は同じ高床式住居でも理由が異なっていることを知っていれば選べる問題です。

 

☆Point!

熱帯の高床:風通しを良くするため

冷帯の高床:建物からの熱で永久凍土が融けないようにするため

 

Ⅱの日本地理では、隣接する都道府県の数や東北地方の祭り、北海道の濃霧、農業産出額とその割合に関する問題などこちらも典型問題が多かったです。

 

また、昨年度はⅢとして出題されていた地形図に関する問題が、今年度はⅡの小問の中に組み込まれました。

 

最後の記述は、富山県で水力発電が盛んな理由を、冬に降った雪が融けることで多くの水が得られることと関連付けて考える必要があり、やや難しかったです。

【大問2:歴史】

大問2は歴史分野からの出題でした。

Ⅰは近世までの歴史から広く出題されました。

メソポタミア文明で使われた文字(くさび形文字)を写真で選ばせる問題や、薩摩藩や肥前藩における藩政改革を資料を基に記述する問題など、地理と比べて難易度が高い問題が多かったように感じます。

 

Ⅱは近代以降の歴史に関する問題でした。

記述問題は、ポーツマス条約の内容に対して国民が政府を批判したきっかけや、オイルショックに関する問題で頻出問題でしたが、後者は「エネルギー革命によって石油が主なエネルギー供給源になっていた」ということも併せて記述する必要がありました。

 

また、大久保利通の顔写真が提示され、「写真の人物について述べたものとして適当なもの」を選ばせる問題が出題されました。

令和5年度入試では、与謝野晶子の顔写真が提示され、人物名を答えさせる問題が出題されており、人物の顔写真をもとにした問題が2年連続での出題となりました。

資料をもとにした問題が増えていることから、今後もこのような形式での出題が考えられます。

人物の暗記の際は、「人物名と出来事」だけでなく、人物の顔まで一緒に覚えてしまいましょう。

学校で配布される資料集もうまく活用したいところです。

【大問3:公民】

大問3は公民分野からの出題でした。

 

Ⅰは政治分野と現代社会の分野から幅広く出題されていました。

3の問題では新しい人権の「自己決定権」にかかわる「インフォームド・コンセント」を答えさせる問題が出題されていました。

 

Ⅱは主に経済分野からの出題でした。

5で「エシカル消費」に関する問題が出題されましたが、選択式だったため選べた人が多かったのではないでしょうか。

エシカル消費に関しては、令和5年度の鹿児島高校でもエシカル消費に関する問題が出題されましたが、「エシカル消費」そのものを知らなかったとしても選ぶことができる問題でした。

近年頻出のテーマですので、ぜひ覚えておきたいところです。

 

また、円安・円高に関する問題が出題されていましたが、これも経済分野では頻出です。

他に経済分野で頻出なのは「公開市場操作」「均衡価格」「株式会社のしくみ」が挙げられます。

【対策】

地理分野の学習は、基本的な語句を覚えるのももちろんですが、教科書に載っている地図や気温と降水量のグラフ、出荷額や出荷製品の特徴をおさえておく必要があります。

全体的にとにかく資料が多くなっていますので、学習する時は必ず図や表をもとに進めていきましょう

 

また、公民は幅広く出題される傾向にあります。公民の学習で大事なことは、「広く浅く」学習することです。

中学校で本格的に公民の学習が始まるのは早くても中学3年生の7月ですので、受験までに日のない中で短期間で多くのことを学習することになります。

 

地理・歴史の復習をしながら公民の知識を詰める必要がありますので、過去問などを合わせて確認し、出題されやすいポイントをおさえながら学習を進めていきましょう。

数学の傾向と対策

【総評】

難易度としては「難化」と思われます。

鶴丸・甲南高校合格者の予想得点率は「75%~80%」程だと思われます。

 

問題自体の難易度も上がっていますが、それ以上に後半の出題形式が大きく変わったので対応に追われた人が多かったのではないでしょうか。

【大問1:小問集合➀】

大問1は小問集合でした。

例年と比べ、やや手を付けにくい問題が多かったです。

 

具体的には、3の税込価格から本体価格を求める問題や、5の標本調査の問題などです。

ただ全体的な難易度は標準的ですので、確実に満点を取りたいところです。

【大問2:小問集合➁】

大問2は、昨年度は先生と生徒の会話文形式であったのに対し、今年度は形式が元に戻りました。

 

1の正八面体のねじれの位置を考えさせる問題はこれまであまり見たことがない問題だったのではないでしょうか。

3の作図では、作図の手順が3段階あったことから、やや難しく感じたかもしれません。

5は昨年度二次方程式の文章題でしたが、今年度は連立方程式に戻りました。二次方程式の場合は解の吟味まで必要となり、記述力で差がつきます。

 

方程式の文章題は必ず出題されますので、記述が苦手な人や文章題そのものに苦手意識を抱えている生徒さんは早めの対策が必要です。

【大問3:データの活用】

大問3はデータの活用からの出題でした。

 

階級の幅を変えて作成したヒストグラムを選ぶ問題は新傾向の問題でしたが、落ち着いて考えれば完答することができる問題でした。

昨年同様、箱ひげ図から読み取れることとして「正しい」「正しくない」「図からはわからない」の3択から選ばせる問題も出題されました。

 

データの活用に関する問題は問題文や条件などが長くなりがちですが、問われていることは基本的なことばかりであり、また配点も18点と大きいことから、ぜひとも満点を狙いたいところです。

【大問4:関数】

大問4は関数に関する問題でした。

例年、関数の問題は座標平面上での直線や放物線について考えさせる問題が続いており、平成29年度入試以来となる速さを絡めた問題でした。

 

2で平均の速さを求めさせていますが、10秒後と20秒後のそれぞれの距離の値を出せば簡単に求められます。

3は関数の問題というよりは方程式の問題でした。

 

2題とも丁寧に条件を整理し、速さと時間の条件から距離についての方程式を立式させることで解くことができます。

【大問5:図形】

大問5は図形に関する会話文形式の問題でした。

今回の数学の問題の中で、最も難易度が高かったのがこの大問5です。

 

1は円周角の定理を用いることで解くことができます。

2は証明ですが、今年度は穴埋め形式での証明となりました。

 

平成20年度以降、証明が穴埋めで出題された年度はありませんでした。

その代わりに、求め方や計算過程を書く問題が大問4と大問5の2題出題されていました。

 

3(1)は2を利用すれば解くことができます。

(2)は補助線をうまく引く必要がある問題でした。

∠CGD=60°という条件を用いて、30°、60°、90°の直角三角形を作ることができれば三平方の定理を用いて求めることができます。

 

上に示した簡易的な図で具体的に説明すると、

 

GCを延長し、Dから垂線を下ろして交点をHとする

 

⇒△DGHにおいて、GD=8よりGH=4、DH=4√3

 

⇒CH=1より、△CDHで三平方の定理を用いるとCD=7

 

という手順で求めることができます。

 

余談ですが、高校の「数学Ⅰ」で学習する余弦定理を用いると簡単に導出することができます。

(3)は同様の手順でCEの長さを求めることができれば、面積比は相似比の2乗であることを用いて解くことができます。

【対策】

50分という時間制限の中ですべての問題を解き切るのはなかなか難しかったのではないでしょうか。

数学の問題を解く上で重要なのは、「いかにパターンに持ち込めるか」ということです。

例えば、大問5の問題であれば「特別角の直角三角形を作る」というパターンを知っていれば何とか試行錯誤して考えることができたかもしれません。

 

もちろん計算力や思考力も重要ですが、自分が問題を解く上で活用できるパターンをいくつか持っておけば最終的に答えにたどり着く可能性が上がります

パターンを習得するには反復練習を重ねるほかありません。少しでも多くのパターンを習得できるようにしましょう。

3.おわりに

冒頭で述べたように、ここ数年の傾向の変化とは異なり、令和6年度は令和5年度と比べて大きな傾向変化はありませんでした。

強いてあげるとしたら、「問題文のボリュームが増加して、様々な角度から出されるようになった」ということでしょうか。

 

全体的な傾向ですが、資料やイラストをもとに考える問題が増加しており、一問一答などの単発の知識を詰め込むだけでは対応が難しい問題が増えてきているように感じます。

教科書や資料集などを活用しながら、図やイラストごと頭の中にインプットする作業が必要となるでしょう。

 

また特徴的だったのは、「適当でないもの」を選ばせる際に、問題文が太字になり、強調がなされていたことです。

過去問演習ではつい見落としてしまっていたから、助かりました!

という生徒さんもいたのではないでしょうか。

 

入試本番ではこれまで積み重ねてきたこと以上の実力はなかなか出せないものです。

これから受験生を迎えるみなさん、今からでもできる対策を始めてしまいましょう。

 

この記事がこれからの受験勉強の一助になれば幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。