【入試分析】令和5年度鹿児島県公立高校入試を受けて【傾向変化】
こんにちは。郷中塾の藤井です。
今回は令和5年度鹿児島県立高校入試の内容を各教科ごとに見ていきたいと思います。
1.全体的な傾向
令和4年度の入試においては数学と英語の問題構成に大きな変更がありましたが、令和5年度も国数英の3教科において変更が見られました。
過去5年のなかで2年続けて出題形式が変化したということは、鹿児島県教育委員会の指針として「出題形式の流動化」というものがあるのではないでしょうか。
ある意味では「鹿児島県立高校入試」の画一化を脱却するという面も見てとれます。
2.各教科詳細
各教科、例年の出題形式と合わせて見ていきたいと思います。
2-1.国語
大問1の漢字については読み書き3題ずつに加えて、令和2、3、4年と3年連続で問われていた「行書の漢字を楷書で書いた時の総画数」という問いと変わって「行書で書かれた漢字の特徴」が問われました。
行書の特徴が問われたのは平成31年度以来でしたが、今回は選択肢が3択(平成31年度は4択)となっていたためやや易しかったと言えるでしょう。
出題年度 | 出題内容 |
---|---|
令和5年度 | 行書の特徴(3択) |
令和4年度 | 総画数 |
令和3年度 | 総画数 |
令和2年度 | 総画数 |
平成31年度 | 行書の特徴(4択) |
平成30年度 | 総画数 |
平成29年度 | 「へん」の筆順が変化しているものを選ばせる(4択) |
平成28年度 | 総画数が最も多いものを選ばせる(4択) |
平成27年度 | 総画数 |
平成26年度 | 行書の特徴(4択) |
大問2の評論は広田照幸の『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』からの出題でした。
1は接続詞の組み合わせ問題、2は熟語の構成を問うものでした。
鹿児島県立高校入試においては接続詞問題を除き、国語の知識事項に関する問題はあまり出題されません。
過去5年のうち、令和4年が文法(助動詞の識別)、令和3年が文法(助詞の識別)、令和2年が文法(品詞の識別)と本文の内容に合致した四字熟語の選択、平成31年が文法(品詞の識別)という出題で、文法問題を欠いたのは平成27年以来です。
出題年度 | 文法 | その他知識事項 |
---|---|---|
令和5年度 | 熟語の構成 | |
令和4年度 | 助動詞の識別 | |
令和3年度 | 助詞の識別 | |
令和2年度 | 品詞の識別 | 四字熟語 |
平成31年度 | 品詞の識別 | |
平成30年度 | 品詞の識別 | ことわざ |
平成29年度 | 活用の種類 | |
平成28年度 | 『に』の識別 | |
平成27年度 | 慣用句&古事成語 | |
平成26年度 | 『の』の識別 | 慣用句 |
3は本文内容をまとめた資料の空欄補充問題でした。分量としてはⅠ、Ⅱがそれぞれ7字、9字の抜き出し、Ⅲが65字の自由記述でした。
記述問題の分量は5年連続で65字以内と変わりません。
しかし、出題形式として昨年初めて登場した、「本文における説明として適当なものを2つ選ばせる問題」や「比喩表現を筆者の主張と結びつけて言い換え、指定された字数内でまとめる問題」は今年は出題されませんでした。
代わりに、本文内容を整理したノートの穴埋めという形式の問題が出題されました。今回の記述問題の解答作成に該当する箇所は大半が最後の方にまとまって載っていたため平易だったと言えるでしょう。
初めての形式の問題に戸惑った方もいたと思います。
4は中学生の発言の中で筆者の考えに最も近いものを選べというものでしたが、こちらの問いは鹿児島県公立高校入試でよく出題される形式でした。
大問3の古文は十訓抄からの出題でしたが、こちらの本文についてはH29年度の広島県立高校入試に出題されたものと同じものでした。中には読んだことのある生徒もいたかもしれません。
問いについては現代仮名遣いと主語選び、本文の内容についての話し合いの中身を適語、適文で埋めるもので例年と変わらない形式でした。
会話文中の空欄を適文で埋める問題については、平成31年度に25字以内という語数指定の出題がありましたが、今年と令和2, 3年度が10字以内、令和4年度が15字以内と分量的には少ない傾向が続いています。
大問4の小説文は歌代朔の『スクラッチ』からの出題でした。
1は傍線部における登場人物の様子を説明したものとして最も適当なものを選べという問題、2は傍線部における登場人物の心情説明を抜き出しと10字以内、15字以内で書かせる問題でした。
特徴的だったのが3で、従来であれば単発の記述問題として課されていた問いが、ワークシート形式でシートの該当箇所に入る適切な文を記号で選ばせたうえで65字以内で記述せよ、という形に変わっていました。
大問5の作文は2023年に開催される第47回全国高等学校総合文化祭に関連づけられた問題でした。与えられた3つの資料の中から2つを選び、記事の下書きを完成させる問題でした。
令和4年度の作文は世界自然遺産、文化遺産の登録を受けて「自然や文化など先人が残してくれたものを引き継ぐために私たちは何をするべきか」というもの、令和3年度は「辞書に書かれた語句の説明の特徴(良い点・問題点)」というテーマで年によってかなり変わります。
参考までに10年分の作文テーマは以下の通りです。
出題年度 | 出題テーマ | 備考 |
---|---|---|
令和5年度 | 全国高等学校総合文化祭の来場を呼びかける記事作成 | 与えられた3つの中から2つの資料を用いる |
令和4年度 | 自然や文化など先人が残してくれたものを引き継ぐために私たちは何をするべきか | |
令和3年度 | 辞書に書かれた語句の説明の特徴(良い点・問題点) | 2つの特徴から1つを選択して書く |
令和2年度 | 「古典をマンガで読むこと」についての議論内容 | 良くない点を書く |
平成31年度 | 高齢化に関する資料の読み取りと、高齢者とコミュニケーションを取る際に心がけたいこと | |
平成30年度 | 国民体育大会・全国障害者スポーツ大会で来県される方々に本県を再訪してもらうための取り組み | 複数の資料を組み合わせて書く |
平成29年度 | グローバル社会において必要なこと | 大問2の評論問題に付随 2つの立場から1つを選んで書く |
平成28年度 | インターネットを活用する上で心がけたいこと | 大問2の評論問題に付随 |
平成27年度 | 外国人が日本旅行中に感じた「言葉に関する問題」の解消方法 | 大問2の評論問題に付随 |
平成26年度 | 与えられた俳句から想像する句の情景や作者の心情 | 大問3の評論問題に付随 4つの俳句から1つ選択 |
2-2.理科
大問1は例年と同じく小問集合でした。
昨年度と同じく、「理科の知識と身の回りの物事が密接に関わっていることを示唆するような出題形式の問題」が出てきましたが、出題内容自体は今までと変わりません。
大問2のⅠは桜島の降灰予報に絡めた火山に関する問題、Ⅱは天体から太陽に関する問題でした。
特段難しい問題もなく、解きやすいものが多かったと思います。
大問3のⅠはダニエル電池、Ⅱは炭酸水素ナトリウムの実験に関する問題でした。
昨年度の公立入試では学習指導要領の改訂で加わった「ダニエル電池」が出題されなかったため今年が初登場でした。
-極を選ばせる問題や、銅板の表面で起こる変化など定番のものばかりでしたが、3の(2)はセロハンチューブがない場合の反応を記述させるというやや特異なものでした。
Ⅱは二酸化炭素の性質の記述問題や、塩酸と過不足なく反応する炭酸水素ナトリウムの質量、ベーキングパウダーに含まれている炭酸水素ナトリウムの質量を求める問題でどれも典型問題でした。
大問4のⅠは刺激と反応、Ⅱは植物、動物の分類からの出題でした。
出題内容は刺激と感覚器官の組み合わせを選ぶ問題や、反応にかかる時間を求める計算問題、反射による信号の伝わり方など、どれも基本的な知識を問うものでした。
Ⅱの生物の分類については2,3と続けて2択ずつ答えさせる問題が出題されました。
また、4は、カエルが「両生類である」ことを問う問題ではなく、「幼体と成体で生活場所が異なる」ということを答えさせる問題でした。
大問5のⅠはレンズのはたらき、Ⅱは電流の性質からの出題でした。
凸レンズに関する大問が出題されたのは平成30年度が最後だったので6年ぶりでしたが、どれも基本問題でした。
特に「レンズの中心、焦点、いずれも通らない光の道筋」は公立入試頻出のものでした。
Ⅱの電流の性質の問題も電圧と電流の値を求めたり、直列回路や並列回路の抵抗器を消費する電力が大きい順に並べたりする問題で癖のないものでした。
全体的に易しい問題が多かったと思います。
2-3.英語
大問1はリスニングです。
昨年と比べてやや出題形式に変更がありました。
変更点は以下の通りです。
・1〜4が1スクリプト(台本)につき1題ずつで1回放送(合計4問、計12点)
→1~5が1スクリプトにつき1題ずつで1回放送(合計5問、計15点)
・5~7が2回放送(6が記号1題と英文記述1題に分離して合計4問、計13点)
→6~8が2回放送(合計3問、計10点)
記号問題と記述問題の総数については変わっていませんが、全体としてはスクリプトの数が一つ増えたため多く感じた方もいたかもしれません。
8の記述問題については「留学生を歓迎するために何ができるか」ということを答えさせる問題で、リスニング記述としては定番の問題でした。
大問2は1が対話文選択でした。
2は昨年から登場した英語で書かれた説明を利用した適語補充でしたが、聞かれた単語が ”arrive”、”kitchen”、”vegetables”で、語句が分かってもスペル(つづり)が分からない生徒が一定数いたのではないかと思います。
一昨年まではヒントがない空欄補充でしたが昨年から英文によるヒントが追加された関係で求められる語彙力のレベルが上がった印象です。
3の適文補充(3語 対話文形式)は2と同じく昨年度から登場したものでしたが、昨年度が一連の対話文の中で語句を考える必要があったのに対し、今回は(1)(2)(3)と別個で一文に対して一文の返答という形で分量が非常に少なくなりました。
4の英作文はイラストを見て出来事を記述するという問題で、昨年の資料を使って選んだものを薦める英作文から大きく転換しました。
大問3はⅠ 適語適文補充・英問英答、Ⅱ適語補充・資料読み取り、Ⅲ 対話文補充・本文趣旨の理解の3題構成でした。
出題形式にやや変更があったものの、昨年Ⅱに含まれていた完答で4点という問題の配点分が、Ⅰの中に2点ずつの2題という形で分散されました。
設問や本文のレベルについては複雑な問題もなく平易でしたが、本文や設問の中に仮定法や原形不定詞などの単元も見られました。
大問3の分量が増えたのは昨年令和4年度からですが、分量の増加に伴って記号問題が増え、英問英答が1題に変わったりと難易度の調整がなされています。
大問4の長文は『鳥と湿地』がテーマの文章でした。
1では毎年本文に関するイラストが示された問題が出題されますが、今年は長文がプレゼンテーションになっていて、スライドのタイトルを発表順に並べる問題に変わっていました。
年度によっては、イラストがよく分からない…とこぼす生徒もいたため、文字の方が客観性が高く、回答に説得力を持たせられるので答えやすかったと思います。
2の抜き出しは年度によって出たり出なかったりですが、3の発表時に使用したグラフとして適当なものを選ばせる問題は初でした。
類似のものとしては令和4年度は大問3のⅠ、令和3年は大問3のⅢと今までは大問3にあったものが、難易度をやや落として大問4に含まれました。
5の日本語記述の問題は下線部の内容を25字程度の日本語で書け、という問題でした。
公表されている配点が6点と非常に大きいのが気になりますが、2つの要素を回答に含める必要があったため実質3点ずつの可能性が高いです。
6の本文内容に関する英作文についてはテーマが『環境のためにできること』という比較的平易なものであったため、時間配分さえ誤らなければ得点源にできた生徒が多いのではないかと思います。
各大問を通してを見てみると、昨年大きく平均点が下ぶれしたこともあり、全体的に難易度調整が図られたように見えました。
2-4.社会
大問1のⅠは世界地理からの出題でした。
出題内容としては海洋名、正距方位図法の読み取り、特定の国の特徴など、どれも基本的なものだったと思います。
Ⅰの世界地理においては記述問題が2題出題されました。
配点は2点問題が1題と4点問題が1題でした。
世界地理における記述問題の出題推移は以下の通りです。
出題数 | 出題配点 | 出題内容 | 出題内容 | |
---|---|---|---|---|
令和5年度 | 2問 | 6点 (2点、4点) | EUの利点 | ブラジルの輸出品の変化 |
令和4年度 | 1問 | 2点 | 特定の国における再生可能エネルギーの利用特徴 | |
令和3年度 | 2問 | 4点 (2点×2) | 湖を拡大させる気候的要因 | バイオ燃料の利点 |
令和2年度 | 2問 | 4点 (2点×2) | アジアへ日本企業が進出する理由 | 特定の国における輸出品目と総額の変化 |
平成31年度 | 2問 | 4点 (2点×2) | パリの気候の特徴 | モノカルチャー経済の問題点 |
どれも基本的な知識を問うものですが、特徴として「例年、世界地理の記述問題は2点問題だけである」という傾向を破ったのが今年になります。
Ⅱは日本地理からの出題でしたが、こちらも世界地理と同様、基本的な問題が多かったと思います。
北海道で行われている農業や、海流名、特定の県の特徴(年齢別人口割合、人口増減率、産業別人口割合)、扇状地の特徴などです。
Ⅲでは地形図の読み取りに関する問題が出題されました。
鹿児島県立高校入試では、あまり地形図の問題が出題されません。
直近で地形図を用いた問題が出題されたのは、令和2年度の避難経路に関する問題(地形図の知識不要)を除くと平成30年度以来になります。
今年度のⅢは1,2と2題に分かれており、1は地図記号と実際の距離の組み合わせを選ぶ問題でした。
1と同様の問題が出題されているのは平成27年度のⅡの2です。
こちらも地形図から地図記号と実際の距離の組み合わせで正しいものを選ぶ問題でした。
平成20年度まで遡って見ましたが、平成22年度が地図記号に関する問い、平成20年度が実際の距離と地形の断面図に関する問いで出題頻度は高くないことがわかりました。
2の類似問題としては令和2年度の防災についてまとめたレポートの適文補充が挙げられます。
大問2のⅠは近世までの歴史からの出題でした。
語句を答えさせる問題や指定語句を使わせる記述問題、できごとの年代並べ替えなど傾向は例年と変わりませんでした。
Ⅱは近代以降の歴史からの出題でした。
1の①においては「漢字4字で書け」という指定がありましたが、「国連(正答は国際連盟)」という回答をさせない意図があったと思います。
他の問題も語句やできごとの時代順など基本的なものが多く、変わった問題や難しい問題は見られませんでした。
Ⅲは米騒動が起こった理由を「シベリア出兵」「価格」という語句を使って書け、という問題で、典型的な記述問題でした。
大問3のⅠは日本国憲法・基本的人権・三権に関する問題でした。
憲法条文の空欄を埋める問題や新しい人権、衆議院の優越についてなど基本的な問いがほとんどでした。
ただ、4の予算の議決における衆議院の優越に関する問いで「何日以内に議決がされない場合、衆議院の議決が国会の議決になるか」という問いは迷った人もいたと思います。
選択肢が「10日」と「30日」という二択与えれられており、解答は「30日」の方でしたが、これらの数字は内閣不信任案が可決された後の内閣の流れの中で出てくる日数でもあります。
5の記述問題については若者の投票率を上げるための工夫に関する問題で、話題としてよく上がるものではあったため答えやすかったと思います。
Ⅱは経済分野に関する問題でした。
税金や契約に関する語句を答えさせる問題や、日銀の役割等、Ⅰと同様に基本的な問いがほとんどでした。
5の記述問題については株式会社の有限責任についての記述問題でしたが、「出資額のみ負担」という基本的な部分を答えさせるものでした。
Ⅲは案内標識に見られる表記の工夫でした。
鹿児島県の公民のⅢの記述問題は、他の問題と比べるとやや書きづらいものが多いように感じますが、今回はよく見られるもので書きやすかったと思います。
2-5.数学
大問1は小問集合でした。
どの問題も標準的な難易度で配点も例年と同じでした。
連立方程式は毎年大問2の中で記述問題として出題されていましたが、今年は大問1の計算問題に連立方程式が含まれていました。
また、確率ではなく、場合の数や循環小数に関する問題が出題されるなど少し毛色の変わったものも出題されましたが、解に辿り着くまでに複雑なものはありませんでした。
大問2は先生と生徒の会話を踏まえた問題が3題と、作図、二次方程式の記述問題でした。
先生と生徒の会話に関連する問題を出題する形式は今年初登場のものでしたが、設問のレベルとしては例年問われているものと変わりないものでした。
2の作図の問題は3つの条件を満たす点の作図をさせる問題でした。
各条件が求めている作図が何なのかを特定する必要があったため、難しく感じた方もいたかもしれません。
特に、二つ目の条件の「△BCEと長方形ABCDの面積は等しい」から「底辺BCは共通であるため高さを2倍にする必要がある」という考え方を導き出すことができなければ解答の作図になりませんでした。
3は過去5年連立方程式の文章題からの出題だったものが、今年は二次方程式の文章題に変わっていました。
大問3はデータと資料の活用からの出題でした。
今までデータの資料と活用だったこの大問3が、令和4年度に一次関数が出題されたことで昨年大きく難化しましたが、今年はまたデータの資料と活用に戻りました。
ただし、従来の出題テーマが「ヒストグラム」や「相対度数」に関するものであったのに対し、今年度の出題テーマは「箱ひげ図」に依るものでした。
特徴的であったのが1の「表をもとに適切な折れ線グラフを選ばせる問題」や、14個(7個の箱ひげ図が載っている図が二つ)の箱ひげ図について書かれた5つの文章についてそれぞれ「正しい」「正しくない」「図からはわからない」という三択の選択肢で答えさせる問題です。
例年、データと資料の活用が出題されるこの大問3は出題配点が合計で13~14点の間で推移していましたが、今年は16点という配点で出題されました。
大問4は関数からの出題でした。
1、3は座標を求める問題で難易度はやや易しめでした。
2は関数上の動点の座標の変化に伴い変化するものを「すべて選べ」というもので、思考力が問われました。
ただし、座標の変化に伴って変化するものが直線の式だけであったため、そこまで難易度は高くありませんでした。
3(2)ではサイコロを投げて決めた点Pが△OAB上にある確率を求めよ、という問題でしたが、「点Pのx座標とy座標は共に整数となる」ことが分かれば図を書くことで容易に求められる問題でした。
図を書くと下記のようになります。
例年大問4は配点が17点であることが多いのですが、今年度は大問3の配点が大きくなったことにより、15点分の出題でした。
大問5は平面図形の問題でした。
出題内容は長方形を対角線に沿って折り返すことによってできる図形の辺の長さや面積を求めるものでした。
1~3は典型問題としてよく知られているものでパターン演習をしたことがある人はスラスラと解けたと思います。
非常に珍しいケースではありますが、鹿児島県公立高校入試では平成22年度に類似した図形の折り返し問題が出題されたことがあります。
4の△AIJの面積を求める問題は△DAI-△DAJで答えを求めることができます。
上記の図のように、外側まで図形を延長して△DAI∽△KCIであること利用して△DAIの面積を求めます。
3でDFの長さ9/4を求めているのでDF = AHから、AH:AB = 9/4:15/4、すなわち3:5が求まります。
さらに△DAH∽△KBHよりDA:KB =3 : 5となり、DA : KC = DA : (KB + KC) = 3 : 8 が わかります。
これで△DAIと△KCIが3 : 8 であることがわかりました。
△DAIの面積は実数値で求めることが可能です。
△DAIと△KCIの相似比が求められたことから、高さのMIに当たる部分は実数値6に3/11(3+8)をかけて18/11と求まります。
これによって△DAI=AD×MI×1/2を計算して、面積が27/11とわかります。
△DAJの求め方も同じような手順です。
対象な図形であることから、KB = CLで△DAJと△KLJの相似比が3 : 13とわかり、求める高さOJは6×3/16(3+13)で9/8とわかります。
よって△DAJ=AD×OJ×1/2を計算して、面積が27/16とわかります。
△DAI-△DAJを求めたいので27/11-27/16を計算すれば135/176という解にたどりつきます。
全体的な傾向として見られたのは、配点の大きい問題が減少しているということです。
時間内で解くことのできる問題数が限られているということもありますが、他の教科と比較した際に点差が開いてしまいやすいのが配点の大きい数学でした。
今年度の大問3のように、1題あたりの配点を小さくすることができれば試験における科目配点の公平性を保てるでしょう。
3.終わりに
令和4年度鹿児島県立高校入試の出題形式の変化に続いて令和5年度も変わった部分が多く、戸惑った生徒もいたと思います。
しかし、「公立入試とはこういうものだ」という心構えを持って臨めるかそうでないかによって、受験の際に発揮できるポテンシャルは変わってくるものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。